平成26年6月12日、第2回定例会にて一般質問を行いました。
主な質問項目p>
- 区本体における臨時・非常勤等職員の実態と課題について
詳細は以下をご覧ください。
区本体における臨時・非常勤等職員の実態と課題について
第一回定例会におきましては、外郭団体の非正規雇用、特に個人業務委託契約について取り上げましたが、今回は、区本体における臨時・非常勤等職員の実態と課題について伺います。
行政においては、これまでの間、行政改革の推進の観点から、正規職員の定数削減とあわせて、臨時職員や非常勤職員の活用が全国的に進められてまいりました。自治労の二〇一二年の調査によると、自治体の臨時・非常勤等職員の比率は三三・一%であり、全国で七十万人以上が雇用されています。これは自治体職員の三人に一人で、今後も増加が見込まれています。現状、既に臨時・非常勤等職員がいなければ自治体業務は回せない状況となっていますが、公務員だからとパート労働法などが適用されず、非正規だからと雇用の保障もない、いわゆる法の谷間の働き手のため、恒常的な業務についているのにもかかわらず、突然雇いどめに遭ったり、更新回数に上限が設定されていたり、その給与や一時金、諸手当などの労働条件においても、国や民間と比べておくれをとり、整備されていません。結果、正規職員と比較すると劣悪で、不安定な雇用の状況に置かれています。
一方、民間では、そもそもパート労働法に基づき、正規と非正規との間での均衡均等待遇の確保が要請されています。また、最近では非正規雇用者の労働環境改善の点から、無期労働契約への転換等を盛り込んだ改正労働契約法も施行されるなどの動きも出てきています。民間企業と行政では、その労働者、職員に適用される法体系は異なりますが、総務大臣も、自治体が通常の労働者との均衡待遇の確保を図るパート労働法の趣旨を踏まえた対応を行うことは重要との答弁を行っており、総務省もパート労働法改正や労働契約法改正などを念頭に、民間労働法制の動向に留意する必要があると指摘しています。
世田谷区においても、この間、正規職員の削減とともに、臨時職員や非常勤職員が増加してきています。非常勤等職員は、区政の各部門で重要な役割を果たしており、区民サービスの提供にも欠かせない存在となっている状況があります。正規職員との均衡均等待遇の考えから、非常勤等職員の待遇を一層改善していく必要があると考えます。
まず区では、正規職員の数に対してどれぐらいの臨時・非常等職員がいるのか。内訳として、地方公務員法第二十二条に定められた臨時職員、三条三項三号の特別職非常勤、十七条の一般職非常勤等のそれぞれについて現状と、区内在住者の人数比率、男女の人数比率もあわせて伺います。また、その賃金、交通費、一時金等の支給状況についてお聞かせください。
特に非常勤職員については、年間を通した雇用であり更新もあることから、長く区役所の仕事をしている職員も多いと聞きます。非常勤職員は、区役所内部のさまざまな事務部門を初め、保育園や新BOP等の各事業部門など、区政のさまざまな分野で働いています。勤務時間などは正規職員とは異なるものの、その職務内容は恒常的、本格的な業務に従事しているものであり、行政サービスの展開上は、正規職員とともに大きな役割を果たしています。
しかし、その報酬については、正規職員の給料の仕組みとは異なり、基本的に職ごとに一律で定められています。正規職員のように経験に応じて報酬が上がっていくといったものにはなっていません。こうした状況は、非常勤職員のモチベーションにも大きく影響しています。荒川区や千代田区では非常勤職員の経験や能力に見合った報酬額の見直しを実施しています。また、東京都は平成二十五年五月二日、現在ほぼ一律の報酬額となっている非常勤職員の処遇改善に取り組むと発表しています。国は、非常勤職員は単年度雇用が基本であるとして、継続雇用を前提とした昇給制度は認めておらず、先行する二区も制度設計には細心の注意を迫られたと聞きます。どのような処遇設定であれば法制度の範疇と言えるのか。両区の事例を検証、参考にし、世田谷区でも非常勤職員の役割の重要性を踏まえ、報酬については職員経験といった要素を加味した決定方法にしていくべきと考えますが、見解を伺います。
また、非常勤職員は正規職員とは異なり、一時金、いわゆるボーナスの支給はされておりません。非常勤職員に対し一時金を支給していない理由は何か。一時金を正規職員と同様に支給すべきと考えますが、見解をお聞かせください。
次に、雇用期間の問題です。
非常勤職員は、一部の職種を除き、一年の任用で更新限度四回、計五年までというのが基本原則となっているようです。冒頭述べたように、民間では改正労働契約法の施行により、五年で無期雇用への転換が可能になるといった状況も出てきています。有期限の雇用は労働者の生活を不安定にさせるものです。雇用期間の上限を撤廃することが必要と考えますが、区の見解を伺います。
最後に、非常勤職員に対して一時金が支給されていないことに関しては、地方自治法の規定が障害になっている面もあると聞いています。こうした問題を踏まえ、一時、国のほうでも地方自治法の改正の議論があったようであり、今後、関係規定の整備が必要と考えます。区としても、非常勤職員への一時金支給に関し、地方自治法の改正を行えるよう国に対し要請すべきと考えますが、区の見解をお聞かせください。
<萩原 総務部長>
私からは、区における非常勤職員等の実態について、五点お答えいたします。
初めに、非常勤職員、臨時職員の人数、賃金等についてです。
非常勤職員や臨時職員は、区政のさまざまな部門における行政サービスの展開に当たって、大変重要な役割を担っていると認識しております。具体的には、保育園や新BOP、出張所・まちづくりセンターや図書館などを初め、さまざまな職場に配属されており、平成二十六年四月現在、職員数は正規職員五千五十七人に対し、一般非常勤職員が二千五百七十人、うち区内在住者が千八百四十六人で約七二%、女性が八六・三%という状況です。なお、臨時職員が九百四十人程度となっております。非常勤職員は全て地方公務員法第三条第三項第三号に基づく特別職の非常勤でございます。
報酬につきましては、非常勤職員の場合、職務の困難度や資格の有無などを考慮して設定しており、一般的な職では、おおむね時間換算で千百円から千七百円程度、特に専門性が高い職では二千円から三千円程度となっております。また、臨時職員は時給九百円から千三百円程度となっております。このほか、非常勤職員、臨時職員とも、通勤費相当分を支給しておりますが、一時金につきましては、その職の位置づけ、性質等から支給はしておりません。
次に、職務経験の要素を加味した賃金決定をとのお尋ねです。
区の非常勤職員は、先ほどの地公法第三条第三項第三号に基づき任用する特別職の地方公務員という位置づけとなっており、正規職員の勤務形態になじまない職務や専門的な職などに任用することを想定したものとなっております。このことから、任用の単位も一年が基本となっており、法令解釈の上では、例えば任用期間の更新の際に職務経験を加算して報酬に反映することや定期的に昇給するといった制度は基本的には想定されないものとなっております。しかし、非常勤職員の方々は区政のさまざまな部門で活躍しており、職務によっては、業務や同僚を取りまとめる役割を担うなど、職責に一定の差もございます。こうしたことから、区では現在、非常勤職員の職務内容や職責に着目し、必要な場合には職に段階を設け、報酬単価に一定の差をつけているといった対応を行っております。非常勤職員のモチベーションを向上させるためにも、今後も必要に応じて適切な報酬区分を設定してまいりたいと考えております。
続いて、一時金の支給と国への法改正要請に係る御質問にあわせてお答えします。
非常勤職員に対する一時金につきましても、職務経験の報酬加算と同様に、その職の位置づけや性格等から、現在の法体系の中では支給はできないものと考えております。地方自治法では、正規職員の場合と異なり、非常勤の職員に対しては、報酬の支給及び費用弁償に関する規定があるのみで、いわゆる一時金の支給については規定がございません。しかし、この一時金の問題に関しては、昨年十一月に自治体で働く非正規職員の処遇改善に向けて、一時金等の諸手当を支給できるようにする地方自治法の一部改正案が議員提案で衆議院に提出されるなど、国においても動きが出ております。
国に対する法改正の要請をとの御指摘でございますが、区としましても、引き続きこうした法改正等の動向などを注視してまいりたいと考えております。
最後に、雇用期間上限についてでございます。
非常勤職員の任用更新につきましては、勤務実績等が良好な場合に四回を限度として任用を更新できることを原則としております。非常勤職員は区のさまざまな職場において、多様な職務に従事しており、また、本来、長期継続的な雇用を想定していない職であるなど、その位置づけや職務の性質等から、全ての職において、一律に任用更新限度を撤廃することは難しいと考えております。
一方で、非常勤職員の職の中には、専門的な相談業務など、一定の継続性が必要なものもあることから、こうした職については任用の更新限度を設けないなど、職務の内容に応じた対応を行っているところです。区では、これまで報酬の引き上げのほか、正規職員とほぼ同様の休暇を取得できるようにするなど、福利厚生面も含め、さまざまな労働環境整備に取り組んできているところでございます。今後とも、非常勤職員、臨時職員の方々が安心して働けるよう、引き続き環境整備に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
再質問
再質問いたします。
まず、区長にですが、荒川区の西川太一郎区長は、非常勤職員は補助的な役割という一般的な意識を変え、職務意欲を高めるために常勤職員との格差解消を目指したとのことです。保坂区長は、臨時・非常勤等職員の雇用安定、処遇改善のためにどのように取り組んでいくのか。先行する荒川区は、主任非常勤や総括非常勤の区分を設けて賃金ランクを設け、賃上げを行ったり、研修や福利厚生、残業代なども認めています。このように、国での法改正を待たずとも現状でなし得る対策はあるのではないかと考えますが、区長の見解を求めます。
次に、任用根拠のうち、特別職非常勤、地公法三条三項三号の比率が三〇%ぐらいと高いのは大変不自然であります。実態は学童指導員や図書館職員、一般事務員などであり、臨時または非常勤の職ではなく恒常的な職についていることであり、脱法行為と言わざるを得ません。職員全体の三割を占める非常勤職員が特別職であるということは、おかしいのではないかと思いますが、見解を伺います。
また、そもそも業務執行体制への支障の懸念が指摘されています。比率三〇%の自治体でも、職場単位では構成が過半数になっている場合もあり、職場内のチームワークや三六協定の締結の困難さも懸念されています。業務内容が正規職員と同様の業務を遂行していることから見ても、同一価値労働同一賃金の原則に基づいた賃金の設定が求められます。しかし、給与が正規職員の三分の一ということになれば、ますます正規職員の削減による非正規職員への置きかえにも歯どめがかからず、処遇も低下するという悪循環が続くことは否定できないと考えますが、区の見解を求めます。
世田谷区の臨時・非常勤等職員の占める世田谷区民の比率は七一・八%、二千五百七十人中千八百四十六人で、正規職員の四〇・一%と比べて非常に高いです。その中に占める女性の比率は八六・三%、つまり世田谷区の弱い立場の貧困な働き手をふやすことで、納税者や年金の担い手を減らしていくことは自治体にとってマイナスだと思いますし、女性の自立にも貢献しないと思いますが、この点についての見解も伺っておきたいと思います。
<保坂 区長>
あべ議員の再質問にお答えいたします。
非常勤職員、臨時職員の皆さんは、区政のさまざまな分野で活躍をしており、区政運営において欠かすことのできない大変重要な担い手であるというふうに考えています。私もこれまで現場で働く非常勤などの職員の皆さんの職務実態や処遇等に関して、さまざまな意見や改善の要望を伺っております。こういった意見も踏まえながら、区ではこれまでも報酬区分に段階を設けたり、休暇制度を充実させたり、非常勤職員の労働環境に関して必要な改善を進めているところです。
今御紹介の荒川区西川区長がこの問題について行った改革についても、数年前に資料を取り寄せ、検討も行いました。ただ、法と制度のはざまにあって、なかなか現状を変えるのが難しいというところにとどまっていて、まだ大きく変えるに至っていないということは事実だと思います。
非正規雇用の問題は、現在、人手不足ということで、これまでの使い捨てということで、民間の長時間で低賃金の、そういった待遇ではだめだという動きが顕著になってきているということですが、これは、区役所にとってもあるいは自治体にとっても、当然同じテーマで議論していかなければならないものだと思っています。
国でも、いわゆる法改正、自治法改正の動きがあったということですが、非常勤職員の方々が安心して働き、さらに活躍できるよう、またその法改正以前に、荒川区西川太一郎区長は特別区長会会長でもありますので、どのように荒川区で実現に至っているのか、なお壁はどこにあるのか、このあたりについて、ぜひ率直に御意見を伺いながら、改善に努めていきたい。御指摘は大きなテーマだというふうに受けとめました。
<萩原 総務部長>
再質問にお答えいたします。
特別職の非常勤職員は、職の実態からおかしいのではないかというお尋ねでございます。
自治体の非常勤職員には、主なものとして、地公法の三条三項三号の特別職の非常勤のほか、同法十七条の一般職の非常勤職員や二十二条の臨時的任用職員、また一般職の任期付非常勤職員がございます。これらの一般職の非常勤職員、臨時的任用職員、任期付非常勤職員は、例えば大規模なプロジェクトの計画実施や突発的な業務への対応など、一般的に業務終了までの一定の期間に限って任用することができると考えられております。
こうしたことやその職の性格などから、自治体では、一般には地公法三条の特別職の非常勤が任用されており、当区におきましても、その任用する職の職務内容等を総合的に勘案して、特別職の非常勤として任用しているところでございます。
それから、業務執行体制と納税者という視点からの御質問をいただきました。
区では、これまで行政運営の効率化の観点から、事務事業や執行体制等の見直しを進める一方、生み出された人員を重点課題への対応に振り向けるなど、めり張りのある定員管理を進めてまいりました。ますます複雑多様化する行政需要に的確に対応していくために、今後も正規職員や非常勤職員、それぞれの役割や職務の内容や範囲を踏まえ、力強い組織づくりに向けた適正な人員配置を進めてまいります。
また、納税者の視点といった御指摘もございましたが、非常勤職員等の皆様が、区政の各部門でさらに生き生きと働けるよう、今後とも環境改善に努めてまいります。
以上でございます。
最後に意見と要望を申し上げておきますけれども、住民の公務員批判や議会での人員削減と合理化の要求が、結果的には、制度自体の改善ではなく、弱者である臨時・非常勤等職員のさらなる待遇の引き下げにつながってしまうという現実への反省も必要です。正規職員、非正規職員ともに陥っている悪循環を断ち切り、同一価値労働同一賃金の原則等に立ち返った処遇の改善等の検討を重ねて要望し、質問を終わります。