令和4年2月24日、本会議にて一般質問を行いました。
主な質問項目
- 次期基本計画策定に向けて
- 電子マネーについて
- 区民サービスについて
- 保育サービスについて
- 十八歳成年について
- ワクチン接種について
詳細は以下をご覧ください。
次期基本計画策定に向けて
それでは、通告に基づき質問してまいります。
まず、次期基本計画策定に向けてでございますが、国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担の割合を示す国民負担率は、五十年前の昭和四十五年度には二四・三%でしたが、令和三年度は四八%と高齢化に伴う社会保障の負担増加などにより、これまで最大となる見込みです。一方、国の財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は六〇・七%の見込みであります。このような重い負担の現状で考えさせられるのは、負担と再配分の公平性です。
私は世田谷区の人口や世帯の動向を基に、全世帯の五三%に及ぶひとり暮らし世帯や一七%を占める夫婦のみ世帯といった、人口から見ても世田谷区の半分にも達する方たちが具体の行政サービスがないという現状について質問を重ねておりますが、国においてもこうしたひとり暮らし世帯やその予備群で、孤独や孤立感の中で様々な悩みを持っていらっしゃる方々に何ができるかを政策として実行していくため、菅内閣で英国に次いで世界で二番目となる孤独・孤立対策担当大臣を任命し、具体的な支援策などを議論するため、内閣官房には孤独・孤立対策担当室も設置されています。
新型コロナウイルスの影響によって孤独や孤立など、人々が引き籠もる状況が深刻化していることもその背景にありますが、世田谷区などの都市部においては、人口構成に占めるひとり暮らし世帯や夫婦のみ世帯が増加傾向にあり、合わせて七〇%という深刻な状況です。
また、ひとり暮らしの高齢者は年々増えていて、そのうちの七割は女性です。あるひとり暮らし世帯の当事者の方から、自分の身元を保証してくれる人はいずれいなくなる、保証人がいなければ賃貸への入居を断られるのが現実、ひとり暮らし世帯の自分の緊急連絡先は一体誰なのか分からないといった不安や悩みを聞きますが、どのように解消していくのかも自治体の課題の一つです。
世田谷区として、国の孤独・孤立対策担当大臣や内閣官房の孤独・孤立対策担当室に呼応した所管や施策の展開を期待するものですが、現状、具体の政策は何があるのか。また、今後、次期基本計画などに区民構成の現状に即したこうした視点を取り入れ、具体の政策展開と実現に軸足を移すぐらいの検討をしていただきたいと要望するものです。
また、総務省の自治体DX推進計画では、データ様式の統一化を図り、客観的証拠に基づいて、行政の効率化、高度化を図ることが打ち出されております。すなわち根拠が必ずしも明確でない政策の形成や、その執行を行ってはならないということです。デジタル化により、今後、様々なデータを取得しやすくなりますし、区の統計の資料は、政策決定に向けたエビデンスにもなることから重要と考えます。詳細な転入転出の状況や様々な側面からの数字は、区議会議員をはじめ、区民にとっても、区の現状を把握し、どのように改善する必要があるかを示す指標です。詳細な統計資料の作成を要望するものですが、併せて区長の見解を伺います。
保坂 区長
あべ議員の御質問に答えます。
まず、ひとり暮らしの方が非常に増えている当区における次期基本計画策定との関係について、そして、統計数値のオープンデータ化についてのお尋ねをいただきました。
ひとり暮らしの区民の割合は御指摘のように増加傾向にあり、家族や世帯における支えあい機能の低下が懸念される中、コロナ禍により全国的にお子さんの自殺や不登校が急増し、また、高齢者をはじめとした多くの方が行動抑制を余儀なくされて、孤独、孤立はもはや社会生活のあらゆる場面で起きているものと考えています。社会的に孤立しがちな方が増えることで、将来の介護需要の高まりや、若年層も含めたひきこもりや閉じ籠もりの増加、社会との関わりの低下による生きがいの喪失、あるいは自ら命を絶つ自殺の増加など、様々社会的な影響が心配され、今後の区政運営において大変大きな課題であると認識しております。
区では地域行政制度の見直しを進めていますが、今後身近な地域で受け止め合う居場所や人と人のつながりが重要になってまいります。SDGsの理念でもある誰一人取り残さない社会の構築に向け、セーフティーネットの強化はもとより、地域包括ケアのさらなる深化、あらゆる世代の居場所づくりや就労、社会参加活動の場づくりなどが要求されていると考えております。次期基本計画の検討においては、改めて人口推計を行い、人口の構成をはじめとして、今後の世田谷区の地域社会の見通しなど、様々な角度からデータを分析し、影響を見定めてまいります。
御指摘の転入転出の推移についても、幅広く開示をすることを通して、より正確な実態を区民に把握してもらうよう検討いたします。審議会や区議会の皆様としっかり議論を重ね、情報公開や統計のオープンデータ化を図りながら、命を守る取組を基軸に、必要な施策の実施を準備してまいります。
電子マネーについて
次に、電子マネーについてです。
地域電子通貨せたがやPayへの提案ですが、飛騨市の地域電子通貨さるぼぼコインは二百万円までの高額決済で、現状乱立する全国区の電子通貨との差別化により、地域でのシェアを勝ち取っていると聞きます。世田谷区の地域電子通貨せたがやPayは商連が運営主体で、さるぼぼコインは地域の金融機関が運営主体とのことですから、生い立ちが違うので比較することは難しいこともありますが、現状の十万円の決済上限額を上げる見直しをし、使い勝手や大手の電子通貨との差別化に取り組み、付加価値の増加と区民の利用機会を拡大してはいかがと思い、提案いたしますが、区の見解を伺います。
田中 経済産業部長
私からは二点、まずはせたがやPayについて御答弁いたします。
現在せたがやPayは、チャージ額の上限が十万円となっているため、一度に決済できる金額の上限は、ポイント残額と合わせても十数万円程度となります。他のキャッシュレス事業者の決済額上限を見てみますと、例えばPayPayでは五十万円、auPayでは二十五万円など各社で異なりますが、多いところでも百万円程度となっております。せたがやPayで百万円単位の決済ができるようにするには、ポイントの不正取得や機能拡充を予定している送金機能の悪用、スマートフォン紛失や盗難時の不正使用などの高いリスクが伴います。中小個店での日常的な買物では十万円程度の決済額で十分であると思われますが、電動自転車の購入や自動車学校での教習料金の支払いなど、十万円を超える商品もあることから、一回で決済が済むよう、チャージ額の一定程度の引上げについて、商店街振興組合連合会とも検討してまいります。
区民サービスについて
次に、区民サービスについてです。
区は世田谷区最大のサービス機関でありますが、子どもと一緒に区役所にいらっしゃるパパ、ママが子どもを大変重そうにだっこしていたり、おんぶしている姿を見かけたり、区役所の玄関脇のポールなどにワンちゃんのリードをくくりつけて用事を済ませる区民を見かけるたびに、民間のショッピングセンターなどですら、ベビーカーやペットカートを貸し出して利便性を向上させているのに、来庁する区民への配慮が足りないように感じます。本庁舎や総合支所などに貸出し用のベビーカーやペットカートの設置を要望いたします。
また、併せて、性差のない子育て環境の整備のために有効とされる男子公共トイレへのおむつ替え用のベビーベッドやベビーチェアの設置を求めますが、所管はともに検討しないとのことでしたけれども、区長の見解を求めておきます。
保坂 区長
次に、本庁舎整備、そして、区民への配慮、サービス、ホスピタリティーについてお尋ねをいただきました。
本庁舎整備において、高齢者、障害者、子ども連れの皆さんなど、想定される多様な利用者に配慮した施設の実現を目指しておりまして、トイレに関しても区のユニバーサルデザイン検討会等において専門家や区民の方々に御検討、御助言をいただきながら、設計に反映させてきております。この中でベビーベッドについては、男女共用の多機能トイレのうち、乳幼児連れの来庁者が想定されるフロアを中心に合計十五か所、ベビーチェアについても、区民利用が想定されるフロアの女性用だけではなく、男性用一般トイレ全てに配置する計画としております。子育て環境の充実を図っていきます。
さらに、本庁舎、総合支所におきますベビーカー、ペットカートの貸出しにつきましては、どなたでも来訪して困ることのない窓口環境を整えるために考慮すべき課題であります。一方で、安全性や衛生面への配慮が必要であると認識しておりまして、直ちに実施することはできませんが、今後とも利用者の立場に立ったサービス向上に取り組んでまいります。
引き続き、全ての人に分かりやすく利用しやすい人に優しい庁舎の実現に向けまして、本庁舎整備を着実に進めてまいります。
保育サービスについて
次に、保育サービスについてです。
保護者から、世田谷区の保育園では一歳から毎日紙おむつに名前を書いて持参すると聞きました。渋谷区では、紙おむつのサブスクリプションサービスが利用できるようになったと聞きます。世田谷区の区立保育園でも同じようにサブスクリプションサービスを利用できるようにしていただくことはできないでしょうか。記名する親の負担だけでなく、並べられたおむつの中からおむつを探す保育士さんの負担や、何度もおむつを触って記名を確認する点で衛生面でもデメリットが大きいように思いますというものです。実施を要望しますが、区の見解を伺います。
また、他の五歳と四歳の子どもがいる保護者からは、世田谷区の保育園では年長までお昼寝をしています。保育園の中には、眠れない子は起きていて、静かに遊んでいいよという園がある一方、決められた二時間程度までは、眠れなくてもお布団にいるように子どもたちに強制する園もあります。保育園に、お昼寝が必要でない子どもは昼寝をさせなくてもいいのではと相談しても、休み時間も必要、寝せたら寝るということはまだ睡眠が必要との回答で、聞き入れてもらえません。三歳以降も昼寝をすると、自宅に帰って寝る時間は二十二時から二十三時になってしまいます。無理に寝させられることが子どものストレスにもなっていると思います。先生方の御事情も配慮した解決策があれば、一緒に考えていただくことはできないでしょうかとのことです。見直しを求めますが、区の見解を求めます。
和田 保育部長
私からは、保育について、二点御答弁いたします。
まず、紙おむつのサブスクリプションサービスについてです。
渋谷区では、昨年十一月から、全区立保育園において紙おむつのサブスクリプションサービスの実証実験を二か月間行い、このサービスに満足と答えた方が九割を超えたことから、一月から導入したと聞いております。このサービスは、利用を希望する保護者が企業へサービスを申し込み、企業が保育園におむつを配送し、紙おむつが減ってくると保育園が追加発注する仕組みで、保護者は定額料金を支払うものでございます。世田谷区の区立保育園では、平成二十七年度よりゼロ歳児クラスにおいて紙おむつを区が用意し、廃棄も区が行うなど保護者の負担軽減に努めてきております。一歳児以降につきましては、保護者が登園時に必要な紙おむつを御持参していただいているところです。区のこれまでの取組状況や渋谷区での取組などについて、保護者からの御意見なども聞きながら検討していきたいと考えております。
次に、保育園のお昼寝、午睡についてです。
午睡は園児の体力の回復や脳を休ませたりするものであり、乳幼児期の発達過程や一日の活動において必要なものであることから、保育園では安心して眠ることができる安全な環境を確保する必要がございます。一方で、園児一人一人の在園時間が異なることや、睡眠時間は子どもの発達の状況や個人により差があることから、一律の取扱いとならないよう配慮が必要であると認識しております。
こうしたことや五歳児の園児については、小学校での生活を見通し、午睡のない生活に慣れていくことも必要であることから、一律の対応ではなく、一人一人の園児に合わせ、柔軟に対応していくことが必要と考えております。
以上です。
十八歳成年について
民法改正に向けて。本年四月の民法改正で、成年年齢が十八歳に変更されることに伴い、親権者の同意のない場合の未成年者の取消権の消滅により、十八歳、十九歳が詐欺などの被害に狙われると警鐘を鳴らす報道等がありますが、区として、法的に新成人になる消費者の被害をどのように防止するか、伺います。
我が国の初等中等教育では、お金の話はどうもタブーのようで、現状学習指導要領において、資産としてのお金の管理や投資家としての知識を育成する金融教育の実施が規定されていないことの問題や他国の金融に関する教育の取組と比べて劣っていることが指摘されています。将来、投資の失敗や詐欺に遭わないためにも、金融全般や資産形成に関する知識の醸成など、小中学校での取組が必要です。簡単なファイナンシャルプランナーのカリキュラムの活用等も考えられますが、教育指導課の見解を求めます。
田中 経済産業部長
次に、十八歳成年についてです。
十八歳への成年年齢引下げについては、未成年者という理由での契約の取消しができなくなるなど影響が大きく、国や都とともに普及啓発を進めているところです。区では、ホームページ、消費生活センターだよりに成年年齢引下げについての特集や若者に多いトラブル事例の掲載、区内大学、専門学校等へのチラシや区立中学校三年生への啓発リーフレットの配布等を行い、消費者被害の未然防止に取り組んでいます。
今後、さらに区広報紙、ツイッター、エフエム世田谷等、各種広報媒体を活用して、消費者被害防止のための情報発信を広く行うとともに、消費者トラブルについての相談窓口である消費生活センターの周知にも努めてまいります。
私からは以上です。
粟井 教育政策部長
私からは、金融教育の実施についてお答え申し上げます。
金融教育は、教育課程上の位置づけを踏まえつつ、各教科等において、それぞれ固有の狙いに合わせて実施されております。例えば社会科では社会生活や経済、歴史等の側面からお金や金融を捉えたり、算数、数学では数理的な処理の技能を生かしたりすることが考えられます。金融を主として行う教科は存在しないため、金融教育と各教科等とを関連づけ、充実を図っていくことが重要となります。
今後は、金融教育に関する指導用資料の提供、児童生徒向けの教材の紹介や金融教育における専門家を招聘する環境整備など、さらなる金融教育の充実に向けて各学校を支援してまいります。
以上でございます。
ワクチン接種について
最後に、ワクチン接種についてでありますが、ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応については、以前の一般質問で意見と要望を申し上げましたが、これまでの積極的な勧奨を差し控えていた取扱いが終了し、本年四月から定期接種が再開されます。今後の定期接種に当たっては、個人の意思を尊重するとともに、ワクチン接種機会を喪失した方へのキャッチアップも含め、的確な情報提供を求めるものですが、新たな視点として、男性への任意接種の情報提供についても提案しておりますが、区としての検討状況をお聞かせください。
また、検査ももちろん重要です。検査にかかる費用に対する区の補助等の充実を求めるものですが、現状と今後の取組について伺い、壇上からの質問を終わります。
辻 世田谷保健所長
私からは、HPVワクチン接種とHPV検査についてお答えいたします。
国は昨年十一月、HPV、すなわちヒトパピローマウイルスワクチンの対象者への接種勧奨を再開するよう区市町村に通知いたしました。予防接種法に基づくHPVワクチンの接種対象は小学校六年生から高校一年生相当の女子ですが、男性への接種は令和二年十二月に我が国で任意接種として認められ、現時点では希望される方に自費で受けていただいております。
また、ヒトパピローマウイルスは性交渉により男女を問わず感染し、男性に多く認められる中咽頭がんや肛門がんなどの原因となることが分かってきました。区といたしましては、性感染症に係る相談事業等において、感染しない性行動の啓発に加えて、ヒトパピローマウイルスに関する最新の情報やHPVワクチンに関する有効性と副反応といったリスクを相談者に情報提供し、御自身の健康に役立てていただくよう工夫をしてまいります。
なお、HPV検査は、子宮頸部から組織を採取して、ウイルス感染の有無を確認するものです。令和三年三月に開催された国のがん検診のあり方に関する検討会では、HPV検査で陽性となった方の経過観察法や精度管理体制について検討されているところであり、区といたしましては、こうした国の動向を注視し、必要に応じて医師会等と協議するなど対応を検討してまいります。
私からは以上です。
再質問
それぞれ御回答いただきまして、ありがとうございました。
区長に一点、再質問させていただきますが、全世帯の五三%に及ぶひとり暮らし世帯や一七%を占める夫婦のみ世帯といった、人口から見ても世田谷区の半数に達する方たちへの孤独・孤立対策の具体的な支援策や議論がないという現状を解決し、政策方針や提供するサービスの決定に当たっては、行政の考える対策が住民のニーズにマッチしているかが大事なことだと思います。住民ニーズの把握に向けた調査等がミスマッチを防ぐと思いますけれども、今まで目が向けられていなかったひとり暮らし世帯や夫婦のみ世帯の住民ニーズ調査も詳細に実施していただきたいと思いますが、見解を求めます。
保坂 区長
再質問にお答えをいたします。
私は、今御指摘のひとり暮らしの方、あるいは夫婦のみでお過ごしの方は、もう区民の中では多いわけですね。伝統的に日本では世帯という単位で住民を把握したり、サービスを提供したりしてまいりました。この世帯イコール家族というふうに考えていた時代が一定程度ありましたけれども、おひとり暮らしの方の家族というのは自分しかいないわけですから、そういう意味で、一人世帯というのは行政用語でありますけれども、一般的には通用しない言葉なのかなと。
御指摘のように、これからの区政の骨格を形づくる上で、御本人、当事者の方がどのように感じられていらっしゃるのか、あるいは孤独や孤立の問題、いざというときの不安の問題、様々だろうと思います。そういうところにしっかり目線を置いた現状把握、その声をいただいていくことは大変重要だと思っております。これらが把握できるようなお尋ねの仕方、調査の方法を工夫して、今後の区民検討会議や区議会の皆さんとの議論、その骨格に生かしてまいりたいと思います。
以上で質問を終わります。